震災の前日、ある人と京都で一緒だった。前日というか当日の午前2時ごろまで。その人はいつものように車で神戸へ帰って行った。阪神高速を使って。
5時30分頃にすさまじい揺れで目を覚まして何かが起こっている事を知ったけれど、それが神戸を中心に起こっているとはその時は想像が全くつかなかった。少しづつテレビに映し出される神戸の様子。
私はあの人の事を強く思った。あの人が通る高速の脚はぐんにゃり飴細工のように折れている。携帯電話もない時代。ポケベルをひたすら打っても答えはもちろんない。
あの人とは直接連絡をとれない間柄だったので、ひたすら電話を待っていた。その日は連絡はなくて、次の日実家に戻り閉じこもってからは朝からテレビだけを見ていた。刻々と映し出される神戸の状況と地震で亡くなった人の膨大な数の名前、名前。探していたのだ。あの人の名前が出ない事を。
何日かして鳴るはずのない実家の電話が鳴った。それは、一度も家にかけてこなかったあの人からの電話だった。
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