2013/04/04

愛、アムールを見ました

さて、マスターでむむむ~となった後に、愛、アムールを見ました。 
http://www.ai-movie.jp/ 
カンヌをとったし、その上、アカデミー賞なのにフランス語の映画で作品賞にノミネートされるという快挙。流石のミハエル•ハネケ監督です。 

ハネケと言えば、前に白いリボンをみて、ぽかーんとしていたのですが、 
その時の日記 この日もハネケと冷たい熱帯魚を見とるw ハネケはヘビー二本立てになってしまうのかしらん) 
それと比べるとものすごくすうーっと頭に入ってくる映画でした。 
表面上は。しかし、それだけではない映画です。 


パリの高級アパルトマンに暮らす二人の老音楽家夫婦。昔から愛情を持って自分たちの美意識の中で暮らしてきたであろうことはそのアパルトマンのインテリアを見ればわかります。たくさんの選ばれし美しい絵や骨董や家具や絨毯や革の表紙の本達が雑然と置かれてるようでいて世界観が同じなので不思議と統一感のある、ヨーロッパのお金持ちインテリの家でよくある、私には絶対真似できないあれ、が溢れている家に二人は住んでいます。 

その素敵なリビングルームには大きなグランドピアノ。 
そのピアノさえ、一つの風景のようにも感じてしまう二人の生活です。 

二人はよく食事をします。キッチンの窓側にそんなに大きくないテーブルがあってその2角は壁に面していて反対の角の一辺づつに二人は隣り合わせに座って、夜にはボリュームあるお肉のソテーにしっかりしたソースをかけて食べたりしています。80を超えてるのに。気力体力充分な風に見えます。そんな二人が奥さんの弟子で成功したピアニストのリサイタルに出かけます。とても美しい青年ですばらしい演奏。ああ、私はクラッシック音痴なので知らなかったのですが、彼は本物の有名なピアニストだったのですね。素敵すぎる。彼はこの映画の音楽も監修しています。そして、すごいのはこの映画、音楽が流れている所以外は無音です。 
始まりも終わりも全くの無音で、見てる人をとても緊張させます。 

そのリサイタルから帰って来たあたりから、奥さんの様子がドンドンとおかしくなっていきます。痴呆です。そして、手術をして右半身が不随になってしまいます。あの、美しく気高かった人が。それを悲しむ夫、その事実を認識してしまった奥さん。夫は週に3回だけデイサービスのようなものをを頼むだけで自分一人で奥さんを介護しようとします。時々にしか来ない娘には反対されたりしながら。。。 

そうやって二人は。。。。。 

話はそれますが、私は映画館でもうすぐ上映される作品のリーフレットをもらってきて、それをトイレにおいてそこでじっくり読むのがすきなのですが、 
うちのおじさんが、ある日、あの老夫婦の映画(これ)なんか見るなよ~。なんて言うのです。あんな映画は暗くなるから見たらあかんで~ってね。いや、もう見た後だったんですけどwこの映画、すごいよかったんだよって色々説明してしまいました。 
リーフレットにはあなたは愛する人の最期を決められますか。とか書いてたけど、そういう映画じゃないよね。二人には二人にしかわからない歴史と生活があるっていう事じゃないかな。

この超すばらしい夫婦を演じてる名優、ジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァ の夫婦にしか見えない。違和感ゼロの佇まい。 
ハネケの映画だからみんな、そこに悪意を見つけようとしてるみたいだけど、この映画に関してはそんな事、どうでもいいんだな。わたしには。 

そして、こんな映画だからもっと泣けると思ったけど、わたしが泣けたのは1場面だけでした。すてきに成功した愛弟子が急に家を尋ねてくる所。夫がまず彼を出迎えて、奥さんはかなり時間をかけて美しく自分らしい装いで車いすで現れます。いつもは少し沈んだようだったのに、とてもハイになって、音楽について語ったり本当に楽しそうにしてるんだけど、身体の変化について弟子に言われるとその話はよして別の話題にしましょう、とぴしゃりというところ。あの辺り。美しく成長した大好きな青年を前にしていつまでも美しい先生でいようとする女心を思うとなんだか泣けてきたのでした。それを全く理解できていない美しい青年。その後彼から届いた手紙のわかってなさ。彼も晩年にこの事を悔やむことがあるでしょう。そういう意味ではああいう無知の恐ろしい意地悪さっていうのが、ハネケ節なんでしょうね。 

終盤、わたしの隣のおばさんは泣いてたけど、わたしはずっとスクリーンを見ていました。スクリーンの架空の老夫婦を可哀想とか思う前に、私もやらないといけない事もあるなと責めたりしながら。だけど、映画館から出て町を歩いていると悲しみがふわーっと私を包んで泣きたくなってしまったのです。 

この映画を見てから映画評をちょっと読んでたら一つびっくりしたことがありました。あの、素晴らしい二人のアパルトマンの部屋。あれは全部セットだという事だったのでした。あの二人の夫婦同様、なんと二人が住んでいた物語を感じられる家だった事よ。 
すばらしいなあ。いい映画だなあ。 

白いリボンはあの後、もう1度見てみたけど結局わかんなかったけど、アムールは少し時間をおいて、そうですね、二年ぐらいしてからもう一度ゆっくり見たいです。 

ということで評価は 
 映画館で見るべき。もう終わりかけ。いそげ~ 

  >すばらしい→映画館で見てください! 
  >普通よりもいい→DVD化されたらみてね 
  >普通→機会があったらみてください 
  >それ以下→微妙~~~ 



フランス版 予告編 

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